近年,地球温暖化問題への認識の変化とあいまって,民生部門においても多くのCO2排出削減方策が提案されるようになってきている.
ところで,建築に対するCO2排出削減方策を評価する際,従来は,非定常熱負荷計算を主体とした建築物におけるエネルギー需給シミュレーションを用いてきた.しかし,ヒートポンプや屋上緑化,高反射高放射塗料などは大量に導入した場合,都市環境にも影響を与えるので,効果を正しく評価するためには都市環境をも含めて評価する必要がある.
本研究では,都市環境に影響を与えるCO2排出削減方策として高反射高放射塗料を採りあげる.高反射高放射塗料はヒートアイランド現象に対して有効であるが,建築物のCO2排出削減方策ともなりうる.まず,同方策を東京に大規模に導入した場合の気温低減効果を都市熱環境シミュレーションによって算出し,次に,算出した気温を用いて非定常熱負荷シミュレーションをおこなうことで,高反射高放射塗料の,都市環境を考慮した建築物からのCO2排出削減量を算定する.大規模導入例として、新宿・練馬10[km]四方に導入する場合を採りあげる。
まず,メソスケールレベルでの都市熱環境の変化を評価したところ,塗料の導入は,夏期で最大2.99[℃],冬期では2.79[℃]の気温低下をもたらすことがわかった.同時に日照率を変化させてシミュレーションをおこない,快晴時以外の気温低下も算出できるようにした.
そして,建築熱負荷計算にて塗料導入を評価した.建築熱負荷計算のみではCO2排出量は3.7%減となるが,実際には6.1%減であることがわかった.
今回のシミュレーションでは遮蔽物や都市キャニオン空間における気候を無視しており,またメソスケールの計算結果の通年データ化も簡易的な手法を用いている.今後は以上の点を考慮したモデルを開発し,シミュレーションをおこなう予定である.